エネルギーをめぐる旅 – 文明の歴史と私たちの未来
古舘 恒介、英治出版 2021
副題にもある通りのスケール感。人類が火を手に入れるところから話が始まる、壮大なスケールの本だ。言い方は失礼だが、これを石油会社勤務の普通のサラリーマンが書き上げたというのは凄い。尊敬する。
第1章では火、農耕、森林、産業革命、電気、肥料、食料生産の工業化というそれぞれのエネルギーに人間がどう出会い、それによって社会や生活がどう変わり、ものによってはどう使い尽くしていったのか、が語られる。
第2章はエネルギーそのものの考察で、熱力学の第二法則についてかなりの文量で語られる。
第1章はジャレド・ダイアモンドっぽいし2章も類書があるのだが、本書の特色は第3章以降で、エネルギーと心について語られる。精神論や宗教論にも話が及び、この中で地球温暖化問題やCO2削減などの課題についても触れられる。
前半は圧倒的な情報量と、その情報源の豊富さに舌を巻き、読み物としても面白いので夢中になって読み進められる。歴史の中でどんな科学的発見があり、そのおかげで何が起きたのか、後世にどんな影響を及ぼしたのかが非常に明解に語られる。教科書というものはこうでなければならないと思う。後半は著者の思想が入ってくるので、共感できれば面白いし、そうでなければ少し冗長に感じるかもしれない。
とか色々言いつつ、本書にはとても感銘を受けたのでKindle版で読んだあと、手元に置いておくために紙版でも買い直した。
(2022/11/25 記)